ライフラインなどを設置するための工事では、一般的に道路掘削などを行って施工します。しかし状況によっては大規模な掘削作業ができないケースも多く、掘削によって排土などの手間やコストが発生してしまいます。そこで行われるのが「非開削工法」です。非開削工法では、最小限の掘削でパイプやケーブルなどを埋設できるため、安全かつスピーディに、環境に配慮した施工ができるという特長があります
阪神淡路大震災(1995年)や東日本大震災(2011年)といった大規模災害の記憶も新しい現在、ライフライン(水道・電力・ガス・通信など)の整備は急務だと言えます。ただし、各種幹線整備を行うにあたっては、自然への配慮や振動・騒音への対応などが欠かせません。非開削工法は、そうした問題を解消できる工法なのです。
非開削工法の流れ
更新工事の場合
様々な更新工事の工法がありますが、HDD工法を例にご紹介いたします。
- 小さな貫入立坑よりドリルヘッドを入れてトンネルを形成し、到達坑まで貫通させます。
- ドリルヘッドが到達坑に達したら、ドリルをバックリーマ(拡径治具)に交換し、管を引き込みます。
更生工法の場合
- 既設の配管内部にホースを挿入して洗浄し、カメラを入れて調査します。
- 圧力をかけることで、反転機からホースを配管内に伸ばします。
- 既設の配管の更生工事を行います。
非開削工法のメリットは?
非開削にすることで、従来の大規模な掘削作業が必要なくなります。アスファルトの復旧や道路を掘るための事前準備をする必要もなくなるため、施工期間が短縮され、排土も最小限になり、全体的なコスト削減につながります。
従来使用されていた鋼管は、溶接に非常に時間がかかるほか、重くて扱いにくいというデメリットがありました。それに対して、非開削工法で使用するPE管(ポリエチレン管)は溶接が不要。軽くて取り扱いやすく、工期を開削工法の3分の2程度に抑えることができます。
非開削工法では、大規模な掘削作業が発生しないため、工事による堀削土がほとんど出ないほか、埋め戻し土も大幅に削減することができます。そのため、CO2などの排出を抑え、景観環境を損なうこともありません。
非開削工法の場合、掘削作業を削減できるほか、土木工事を行う時間を大幅に短縮することができます。そのため、工事による騒音や振動など発生を抑えられ、交通規制などをする必要もほとんどなくなることから、周辺地域の住民に迷惑をかけずに済みます。
非開削工法では対応できないケース
ここまでにご紹介したとおり、非開削工法は非常にメリットが多い工法です。しかし、ロケーションの問題などにより、どんな条件でも対応できるというわけではありません。非開削工法で更新する場合、特に非開削工法が行えるかどうかを判断するポイントとなるのは「土質」です。関東ローム層などの、ある程度安定した土壌が比較的施工に適しているとされていますが、下記のような土質の場合は注意が必要です。
施工が困難な土質
大きな砕石がある土質
大きな砕石がある場合、砕石にひっかかってドリルヘッドが進みません。そのためトンネルが形成できず、施工できません。
粘土質
非開削工法では潤滑剤として泥水を使いますが、粘土質の場合は泥水の逃げ場がないため施工が困難となります。
砂礫質
砂礫質の場合は、粘土質とは逆に泥水をどんどん逃がしてしまうため、トンネルの崩れが生じたり潤滑剤の効果がなくなったりして施工が困難になります。
非開削工法Q&A
- なぜ見えない場所を施工できるのでしょうか?
- 事前にその土地の状況を資料で確認して、必要であれば試掘による調査を行っています。すでに埋まっている配管を傷つけないルートを選定したうえで施工するので、安全に進めることができるのです。ただし、途中で障害物にあたってしまう可能性がないわけではありません。もし問題が起こった場合は開削を行って、障害の状況を確認します。
- 施工で配管が傷つきそうで不安です……。
- 施工の際には、配管の前に拡径用の治具である「バックリーマ」を取り付けて、トンネルの直径を配管の直径より大きく広げます。また、トンネルはバックリーマから供給される泥水で満たしますので、配管が傷つく心配はありません。ご安心ください。